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成人式に着る振袖を決める際、お店ではさまざまなタイプの振袖を試着できます。洋服を選ぶときと同じように、振袖にも色や柄・なりたい雰囲気など、多くの要素を踏まえながら見比べることが大切です。ただ、振袖の柄と言ってもどんな柄があるのか知っている方はあまり多くないのではないでしょうか。
ここでは、振袖選びに大切な要素のひとつである「柄」について解説します。
目次
振袖の柄と言っても、どんなものがあるのか分からないことも多いかと思います。振袖の柄には、古くから伝わる意味が込められていたりするものも多いです。ここでは、具体的にどんな柄があり、どんな意味やイメージがあるのかを紹介していきます。
着物の柄でよく耳にするのが「古典柄」でしょう。成人式というお祝いの場で着用される振袖の柄には、縁起の良いものや願いが込められているものが多くあります。古典柄の振袖は時代に囚われず、普遍的で不動の人気を誇る柄です。
古典柄の中でも吉祥文様(きっしょうもんよう)は、縁起がいい、めでたいという意味を表現した伝統和柄のことを言います。中国の影響を受けたものや、日本で生まれたものなどさまざまです。また柄も、松竹梅や御所車、熨斗、扇、菊、牡丹など複数あります。
以下では、吉祥文様を含めた振袖でよく使われる古典柄を紹介します。
松竹梅は、名前の通り松・竹・梅を表した柄です。
松竹梅の組み合わせは、中国の歳寒三友(さいかんさんゆう)に由来します。冬の寒さの中でも常緑を保つ松と竹、冬の寒さに耐えて花をつける梅は、「清廉潔白」「節操」を表す植物として讃えられていました。
また、日本では松は「不老長寿」、竹は「子孫繁栄」、梅は「長寿・繁栄」の象徴として、松竹梅柄はめでたい組み合わせの吉祥文様とされています。
御所車は、平安時代に貴族が乗っていた牛車を描いた柄です。「高貴さ」「優雅さ」を表し、振袖や婚礼衣装に使うと雅やかな柄行になります。
また、御所車によく似ている柄で、牛車にたくさんの花々を乗せた柄は「花車(はなぐるま)」と呼ばれます。牡丹・菊・桜といったさまざまな花をあしらった花車の柄は、「幸せを招く」意味があるとされています。
熨斗とは、もともと鮑(あわび)の身を薄くのして干したものを言います。鮑は長寿を示す縁起物とされており、贈答品に添えられていたようです。現在では、フォーマルな贈り物のシーンで添えられる飾りのことを言います。
振袖の柄としては、「束ね熨斗」として使われていることが多く、おめでたい象徴の熨斗をたくさん束ねていることから、多くの人から祝福を受けていることと、その幸せを周囲の人へも分け合うという意味があります。
鞠は、手鞠の形を描いた柄です。丸く縁どられた鞠の中には、鞠自体の柄も加えられていて、美しい色彩が女性の魅力を引き立ててくれます。鞠の丸い形から「困難が丸く収まる」や、長い糸で作ることにより「縁を結ぶ」という意味が込められている縁起のよい柄です。
一部の地方では女の子が生まれたときや嫁ぐときに魔除けとして鞠を贈る習慣があり、お守りの意味も持っています。
鶴は長寿や豊かな生命力を象徴する瑞鳥で、振袖では翼を大きく広げて飛翔する鶴が描かれています。同じく長寿を象徴する亀(かめ)や松(まつ)、めでたい兆しを表す瑞雲(ずいうん)と組み合わせることが多く、躍動感や華やかさを印象づけられる着物に仕上がります。
鶴の柄は「長寿」「子孫繁栄」や「高貴さ」を意味していて、成人式で着用する振袖以外に婚礼衣装など慶事の着物にもよく使われる定番柄です。
扇の柄は扇面を大きく広げた絵で表され、扇の中にも優美な絵柄が描かれます。末広がりの形をしていることから吉兆のモチーフとして使われていて、「繁盛」「開運」などを意味する柄です。
また、扇柄には「地紙(じがみ)」「檜扇(ひおうぎ)」という種類もあります。
地紙は扇に貼る紙のことで、骨のない紙だけの扇型で表される柄です。地紙の中には草花や文様が描かれ、優美なデザインとなります。
もう1つの檜扇は平安貴族が使っていた扇で、木板を綴じた扇面と左右に付いた飾り紐が特徴です。檜扇の柄は優雅さ・格調高さがあり、礼装によく用いられます。
雪輪は、雪の結晶をくぼみのある円形で表したとされる柄です。
同じ雪をモチーフにした柄には、雪の結晶を精緻にかたどった「雪華(せっか)」があります。雪華と比べると、雪輪は丸みを帯びた優しい形をしている点が特徴です。
雪は春になると水になり、農作物を豊かに育てる源になるため、雪輪柄には「豊作・豊かさをもたらす」という意味があります。成人式の季節感とも合う柄です。
貝桶は、「貝合わせ」で使用する貝をしまう容器(貝桶)を描いた柄です。
貝合わせは平安時代から伝わる日本の遊びであり、たくさんの貝の中からもともと対になっていた二枚貝の組み合わせを探します。二枚で一対の貝は形がぴったりと合うため、貝合わせの貝を収めた貝桶柄は「永遠の契り」や「夫婦円満」を意味します。
貝桶は中世で嫁入り道具の1つにもなっていて、女性との縁が深い柄です。
組紐は、細い糸を幾重にも組んで作られた組紐をかたどった柄です。結び目を作った柄がよく使われています。
細く柔らかな曲線を描く組紐は、着物の柄に繊細さや優美さの印象を与えます。檜扇や鞠、貝桶と合わせられることがあり、華やかさの中に曲線の動きやアクセントを加えられる柄です。組紐の柄には「魔除け」「良縁を結ぶ」という意味が込められています。
亀甲文様は、正六角形の幾何学模様を表した柄です。奈良時代の正倉院宝物にも亀甲文様が使われているほど歴史の古い柄であり、振袖姿に格調高さや高貴さを加えられます。名前の通りに亀の甲羅に似ていることも特徴で、亀甲文様は「長寿」の意味がある柄です。
また、亀甲文様柄は上下左右に隙間なく並べられる形であり、複数を連ねると「永遠の繁栄」という意味を持ちます。
桜は、美しく咲いた桜の花が描かれた柄です。桜は日本の国花であり、春の訪れを感じさせる花として高い人気があります。
桜という名前は「さ」が稲の神様、「くら」が神様の宿る場所を指すという説があり、桜柄は「五穀豊穣」の意味を持つ柄です。
また、さまざまな花が咲く春の中でも、春の盛りを代表する花として「新しい門出」の意味もあります。
菊は、満開の菊花が描かれた柄です。菊は桜と並ぶ日本の国花であり、日本の国章や皇室の御紋などに使われています。古来、菊は邪気を払って長寿をもたらす植物と考えられており、菊柄には「不老長寿」の意味があります。
振袖の柄としては、丸い菊花の「万寿菊(まんじゅぎく)柄」や、長い花びらが乱れ咲く様子を表した「乱菊(らんぎく)柄」が代表的です。
牡丹は、咲きこぼれるような花をつけた牡丹を描いた柄です。
中国では牡丹は百花の王と呼ばれていました。日本においても美しい見た目から縁起のよい植物として、古くから着物の柄に使われています。
牡丹柄が持つ意味は「富貴」「繁栄」「幸福」です。牡丹の柄は大ぶりに、色使いも鮮やかに描かれることが多く、着物の柄行に華やかさを演出できます。
「モダン」は「現代的、当世風」などの意味を持ち、「古典」の反対語でもあります。バラや蝶などの洋柄や、リボンやレース、チェック柄など”和”とかけ離れた柄も、総じて「モダン柄」と呼びます。
今風で大胆な着こなしができ、かつ振袖のインパクトだけで個性を演出できます。また、古さと新しさが共存している「レトロモダン柄」も、近年人気が急上昇しています。
以下では、モダン柄の振袖によく使われている柄の種類と意味を紹介します。
薔薇は西洋花で華やかな雰囲気があり、代表的なモダン柄として振袖によく使われています。薔薇と言うと赤色の花が広く知られているものの、モダン柄で使われる薔薇の色は赤色に限りません。
赤い薔薇は「愛」「情熱」、白い薔薇は「純潔」「尊敬」、ピンクの薔薇は「上品」「淑やか」など、色によって柄の意味は異なります。自分が柄に込めたい意味に合わせて色を選ぶとよいでしょう。
大きく広がるように咲く百合の花は華やかさがあり、振袖の柄では花を大ぶりに描くなど大胆な構図で使われることがあります。
百合は世界各国で純潔を象徴する花として扱われていて、キリスト教では聖母マリアとの関係性もある花です。百合の柄が持つ意味は「純潔」「無垢」で、特に白い百合は2つの意味を強く表します。色によって意味が異なる場合もあり、黄色は「陽気」「幸福感」、オレンジは「華麗」とされています。
蝶は色彩豊かな羽を持ち、空をひらひらと舞う姿の優美さが好まれ、振袖の柄によく使われています。
蝶は小さな卵から成長し、さなぎを経て、最後は大空へと羽ばたきます。成長とともに変化する姿から、「成長」「立身出世」という意味を持つ柄です。また、蝶の読みは「長(ちょう)」につながり、「不老長寿」という意味も込められています。
前述では振袖の柄についてお伝えしました。しかし柄を知るだけで、成人式に着る振袖を決めるのは少し難しいように感じます。そこでここでは、なりたいイメージにスポットをあて、おすすめの柄や振袖を紹介していきます。
フェミニンとは、女性らしいことやその仕草のことを言います。やさしく柔らかなイメージで、ファッションでは一般的に、やさしい色合いのスタイルや洋服を指します。
振袖においては、ベージュや流行のくすみカラーのものを選ぶとフェミニンな雰囲気を演出できます。鞠や菊、雪輪などの純粋な古典柄でも、振袖の地色と柄の色のトーンに統一感を出すことでフェミニンさをより表現できます。
ファッションにおいてモダンとは、都会的でスタイリッシュな姿のことを言います。日本の伝統的な和と現代的なスタイリッシュさを兼ね備えたイメージは、洋服では表現できない、振袖ならではの「和モダン」というイメージで完成されています。
写真の振袖は裾にほどこされた紗綾形の文様と袖の牡丹の花が目を引く、印象深い柄付けです。派手さよりも洗練さを大切にしたい方にとてもおすすめです。
エレガントとは、「優雅な」「上品な」という意味を持つ形容詞です。落ち着いていて、品のいいイメージです。写真の振袖のような、比較的シンプルな振袖は着姿をすっきりと見せ、シックな雰囲気を演出できます。
振袖の柄としては珍しい、写実的に描かれた洋花が大人っぽさを際立たせます。振袖がシンプルなので、帯や小物を合わせたときに互いの良さが引き立ちます。
ファッションの流行や、トレンドの移り変わりは移り変わりが速く目まぐるしいものです。洋服と同じように振袖にも流行があるのかというと、そうではありません。厳密に言えば振袖は洋服ほど流行やトレンドの影響を受けません。
毎年新作の振袖は発表されていますが、世の中の流行やトレンドとして反映されているのは主に「色・トーン」です。振袖の柄には流行やトレンドの影響はありません。
以下では、近年登場した目を引く個性的な振袖を紹介していきます。
総レースの振袖は、華やかで繊細な雰囲気を演出できる振袖です。インパクトもあり、周りと差をつける着姿を求める人にはぴったりです。
一見無地のように見えるレースですが、レース素材が立体感を醸し出しているためシンプル過ぎることなく着こなせます。「全身にレースはちょっと…」という人は、半衿や帯揚などの小物にワンポイントで取り入れるのがおすすめです。
無地の振袖は、コーディネートの自由度が高く自分だけの着こなしが叶います。コーディネートによって、古典やモダンなど幅広い装いを楽しめるでしょう。また、シンプルゆえ飽きが来ず、成人式以外でも卒業式や結婚式など様々なシーンで着用できます。
振袖の柄は吉祥文様に代表される古典柄や、大胆さや個性を出せるモダン柄など、さまざまな柄があります。柄にはそれぞれ意味があるため、柄に込められた意味を理解して、成人式に合う柄を選ぶとよいでしょう。
振袖の柄選びでは、自分がなりたい着こなしイメージを考えたり、色・トーンのトレンドを押さえたりすることも大切です。気になる柄の振袖があればお店に来店して、積極的に試着をしてみてください。